そもそもAT1債とは?
金融業界にいれば、AT1債という債券について聞いたことがあるかもしれません。もしくは、ニュースで経営危機に陥るドイツ銀行がAT1債を償還しませんといった報道で聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、AT1債とはどういった債券なのか極力易しい言葉で誰にでもわかるように説明していきたいと思います。
AT1(Additional Tier 1)債とは、主に金融機関(例えば、みずほ銀行、ドイツ銀行、ゴールドマンサックス等)が発行する社債です。日本語では、その他ティア1債とも呼ばれます。
通常の社債は、クーポンが決まっており、毎年決められた日にクーポンを受け取ることができます。クーポンというのは、株でいう配当のようなものです。ただし、毎回契約時に固定された利率で投資家はクーポンを受け取ります。
また、社債には償還日が決められており、額面分が償還日に返ってきます。
少しイメージしにくいと思いますので、具体例を上げます。
例えば、額面100円のクーポンが年間3%、年一回支払わられるとします。また、償還日は今日から3年後とします。
すると、今日額面100円の社債を買うと、毎年3円もらえます。三年後にはクーポン収益である9円と、額面である100円が戻ってきて合計で109円分がもらえます。(本来は、価格は需給で変動するのでここまでシンプルではないですが、イメージとしてつかみやすいので簡略化しています)
ここまでが一般的な社債の性質ですが、AT1債は通常の社債と何が違うのでしょうか?
まず一つ目、AT1債は、主に金融機関が発行するものです。
二点目、AT1債は永久債として分類されている点です。つまり、通常の社債にあるような償還日がありません。しかし、その代わりに償還可能日が設定されています。
この償還可能日というのは、発行元(債券を発行した金融機関)がAT1債を償還するかしないかを選ぶ権利があります。なので金融機関が償還可能日に償還しなかったら額面である100円は戻ってきませんが、その後もクーポンを受け取ることができます。
少し余談ですが、ほとんどの金融機関は今まで償還可能日に償還する必要がないにも関わらず償還してきました。
しかし、ドイツ銀行はこの償還可能日に償還しなかったため、経営がやはり危ないのではとの懸念が高まったことでAT1債の価格が下落しました。
三点目、この永久債という性質に加えて、もう一つCOCO債(偶発転換社債)として分類されることがあります。この永久債(償還日がない)に加えてCoCo債という性質を併せ持つことで非常に理解しにくいプロダクトとなっています。
CoCo(Contingent Convertible Bonds)債とは、日本語で偶発転換社債と呼ばれます。
では偶発転換社債とは、いったい何なんでしょうか?
偶発転換社債は、もし金融機関の自己資本比率が著しく悪化した場合や経営危機に陥った時には、額面の元本が減らされたり、クーポンの利払いが止まったり、株式に強制的に転換させられたりしてしまいます。
つまり経営危機時にはリスクが大きい債券なのです。
なので通常は、利回りが高く、経営が安定しているときには、投資利益が高い債券となっていますが、ドイツ銀行のように経営危機の懸念が高まると、価格が大きく下落してしまい、損失を大きく被ります。
ではAT1債の性質についてまとめます。
- 経営危機時には、投資家が損失を被る可能性が大きい分、利回りが高く平常時であれば投資効率としては良い。
- AT1債は永久債としての性質を持つ。つまり償還日が設定されていない。代わりに償還可能日が設けられており、通常は金融機関は償還可能日に償還をする。(ただし償還は義務ではない)
- AT1債は、CoCo債としての性質を持つ。つまり、経営危機時には利払いの停止、一部元本の減少、強制的に(投資家に覆す金利はない)株式に転換されてしまうリスクがある。
- 主に金融機関がAT1債を発行する。
匿名 says
初めての言葉でしたが、よくわかりました。