国債の売買において、頻繁に使われる単位があります。それが、もう、し、こつです。日常で生活していても使うことがないので、いちもうにしづよと言われたらまるで呪文のように聞こえてしまうでしょう。ここでは、この日本国債のプライシングに使われる単位の説明をします。
野球で、あの打者は3割6分2厘だ。と聞いたことはあるでしょう。
ちなみに3割6分2厘というのは
3割6分2厘 = 36.2%(0.362)
を表しています。
国債のプライシングには、価格ではなく利回りを使うので、野球の打率と同じように%表示で現在の値段を表します。国債の利回りには、割、分、厘よりも更に細かい、もう(毛) し(糸) こつ(忽) というような普段の生活では使わない単位を使ってプライシングをします。
例えば、国債のプライシングで、債券営業が10年367回の利回りの水準はどの辺ですか?とトレーダーに聞くと、
トレーダーが、「1毛2糸5忽強!」(いちもうにしごこつづよ)と叫んでいたりします。ではここでこの呪文について解説しましょう。
1毛2糸5忽 = 0.0125% を表しています。つまり1毛は0.01%、2糸は0.002%、5忽は0.0005%を表します。
(債券の世界では、0.01%を1ベーシスとも呼び、上記の場合、1.25ベーシスと言います。)
強(づよ)とは、債券価格が高いことを意味しているので、利回りでみると前日と比べて低い水準でプライシングしています。(債券価格上昇(下落)=利回り低下(上昇)です。)反対に、債券価格が前日対比で低く(=利回りは前日より高い)プライシングしたい場合は、1毛2糸5忽甘(いちもうにしごこつあま)と言います。
では、利回りが高くなった、低くなったということは理解できたと思いますが、前日比というのは何の利回り水準を使っているのでしょうか?
通常は、日本相互証券(BB)の引値が参考にされます。この引値は、BBの業者間取引における当日の終値(午後3時時点)を基に算出したものです。詳しい引値の算出方法については以下をご参照ください。
市場取引関係者であれば日々のBB価格が簡単に手に入りますが、個人で日々の利回り水準を確認したい場合は、下記の公社債店頭売買参考統計値を参考にすれば各銘柄の利回り水準が確認できます。
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
では先程の例に戻ると、10年367回は「1毛2糸5忽強!」でした。前日午後3時の引値が0.25%だとすると、前日より強いので0.25%−0.0125%=0.2375%でプライシングをしているということです。「1毛2糸5忽甘!」でしたら、反対に0.2625%でプライシングをしているという意味です。
電子取引が進んできたとはいえ、まだボイスつまり電話で上記のようにやりとりをするお客さんもいます。では何故、まだ電話でのやりとりを続けているのでしょうか?
債券の場合、金額が非常に大きく一回の取引で何千億円と取引をすることがあります。株のように板で取引をしてしまうと、市場を大きく動かし混乱を招く、もしくは約定できない、また金額の大きい取引が他の業者にバレてしまい、先回りしてトレードされてしまう可能性もあるからです。
加えて、流動性が全くない債券を取引する場合には証券会社が、市場で調達したり、利回り水準が現状どの辺にあるのかもわからないケースなどもある為、銘柄によっては電話でのやりとりが続いています。
ただし債券プライシングの自動化も徐々に進んできていて、オンザラン近辺の流動性が比較的高い銘柄や、金額が大きくない既発債などはクリックするだけで簡単にプライシングができるようになってきています。
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