キャリートレード(キャリー取引)とは?
キャリートレード(キャリー取引)は、低金利通貨で資金を調達し、高金利通貨に投資することで利ザヤを稼ぐ戦略です。機関投資家やヘッジファンドでも大変人気のある戦略であり、基本的にはレバレッジを大きくかけることでインカム収入をより高めようとします。
2国間の金利差(スプレッド)が大きいほど高い利ザヤが期待できます。ただし、為替リスクが伴うのであくまでも為替レートが一定であれば高い利ザヤを得られますが、保有している高金利通貨が減価すると為替差損が発生します。
金利平価説によれば、高金利通貨は低金利通貨に対して減価することから、利ザヤを得ることが出来ないと主張していますが、低いボラティリティの局面や高金利通貨の利上げ期待が高まる局面では有効な戦略であると考えられています。
特に豪ドル/日本円は金利差もあるため人気の通貨ペアです。円で資金調達し、高金利通貨に投資をすることを円キャリートレードと言います。
キャリートレードは機能する?
キャリトレードでは、通貨間の為替レートが変化しない限り、金利差によるインカムゲインを享受できます。レバレッジも20倍とすれば、金利差の20倍の利益を得られます。
キャリートレードに最適な局面としては高金利通貨の上昇が見込める時です。つまり、金利差による収益と通貨高によるキャピタルゲインの両方が期待できます。
通貨の上昇が見込めるタイミングとしては、中央銀行が金利を引き上げる、もしくは引き上げる期待が市場で高まって来る時です。こうした局面では、市場参加者がトレンドを捉えようとし、通貨の価値を押し上げる傾向があります。
他方、市場のボラティリティが低い局面においてもキャリートレードは非常に効果的です。為替レートが横ばい推移し、大きく動かなければ運用者はキャリーによる収益を得られるからです。
しかしながら、金利低下局面では、通貨価値が下落する傾向にあり為替差損による損失の可能性が高くなります。
まとめるとキャリートレードで利益を得るためには、市場のボラティリティ(リスク)が小さいか、ある程度の通貨の上昇を見込める局面で機能します。
キャリートレードの具体例
初めに、キャリートレードを行う通貨ペアを決めます。ここでは、例として円の金利が1%に対して、米金利は4%あるとしましょう。つまり運用者は、この金利差である4%-1%=3%の利益を期待して取引を行います。
まず、日本円(100万円)を借りてきて米ドルに換えます(1ドル=110円)。そして、そのドルを年4%の米預金に預けるとしましょう。
米ドル=100万円÷110=9,090.90ドル
4%の米預金に1年間投資すると、以下の通りです。
期末残高=9,090.90ドル×1.04=9,454.54ドル
ただし、ここでは円を借りているので、100万円の元本と1パーセントの利息を返済する必要があリます。
支払額 = 100万円 x 1.01 = 101万円
為替レートが1年間同じで、 1ドル=110円で終了した場合、円を借りたので米ドルの返済額は、以下の通りです。
支払額= 101万円÷110=9,181.18ドル
米ドルの期末残高と返済額の差額が利益です。
利益 = $9,454.54 - $9,181.18 = $273.36
この利益は、まさに期待していた金利差の収益率と一致します。
収益率 = $273.36 ÷ $9,090.90 = 3.0%
上記の例では、為替レートが横ばいで推移したという前提でしたが、為替レートが円高に動けば、損失が出る可能性があります。
キャリートレードのリスク
キャリートレードの最も大きなリスクは、為替相場の不確実性です。上記の例で言えば、米ドルが円対比で下落した場合、為替差損によって損失を被るリスクがあります。加えて、このキャリートレードは一般的にレバレッジをかけて行われるため、わずかな為替レートの変動で大きな損が出ることが往々にしてあるのです。
金利差を得るために、単純に高金利通貨をロングし、低金利通貨をショートすることは効果的ではありません。現在の金利差の水準も取引において重要ですが、それ以上に重要なのは、将来の金利の方向性です。
例えば、欧州の中央銀行が金融緩和を終えたタイミングで、アメリカの中央銀行が金利引き下げに転じるとなると、米ドル安・ユーロ高になる可能性が考えられます。こう言った各国の金利サイクルの違いによっても通貨の価値が大きく変動します。
また、キャリートレードが機能しやすい局面は、市場がリスク選好の姿勢を強めている時です。先行き不透明感の高まりは、投資家はキャリートレードを解消につながります。
1998年に起きたLTCMショックや2008年のリーマンショックの時には、円キャリートレードの巻き戻しが急速に起こり円高に大きく振れました。キャリートレードはレバレッジを効かせた投資であることが多いので、円キャリートレードをしていた投資家は、当時大きな損失を出しました。
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