そもそもバックテストとは、何か?
実際に現場で使われている運用手法には、様々な方法があります。人によっては定性的な判断を基に運用する方もいる一方で、より定量的な判断を基にして運用する人もいます。
定性的な運用とは、例えば、足許の株価全体は下がっているけれども、特定の企業の業績は比較的良好で、今後も利益率が上昇していくということをファンドマネージャーが想定している時、その企業の株を買いに行くというような投資行動が定性的な運用になります。
定量的な運用とは、例えば、日経225で採用されているPERが10-15倍の企業に絞って、その中でも過去12か月のリターンがプラスであればロング、マイナスであればショートというようにある一定のルールに基づいて運用することを定量的な運用と呼びます。
定性的な運用は、ファンダメンタルズを基にした運用。定量的な運用とは、よりテクニカルな数値を基にした運用という事が言えます。
バックテストは何故重要か?
では、何故バックテストは重要なのかについて触れたいと思います。バックテストというのは、過去のデータを基にして、ルールベースで運用することができます。従って、様々な手法を過去のデータを使って試すことができるので実際に勝てるのか負けるのかというのを非常に分かりやすく可視化してくれます。
実際にヘッジファンドや投資信託の運用会社でもバックテストを使っているチームはありますし、かなり実践的な方法でもあります。
ただ注意点としては、マーケットというのは様々な局面があるので、バックテスト上では勝てているとしても必ずしも未来のリターンを保証してくれるものではないことです。
今まで勝てていた手法でも、マーケットの局面が変われば、全く勝てなくなるということも当然あり得るという事を心に留めておいてください。次に現場でも実際に使われている手法の一つであるトレンド戦略について説明していきます。
マーケットの局面について
まず具体的な、バックテストの方法について論じるより前に、マーケットの局面について触れます。どのような現物資産クラスにおいて、今後価格は上昇するのか、横ばいなのか、下落するのか、この3つの局面しかないと考えてよいと思います。
従ってこの3つの局面を上手く当てることが出来れば、トレードにおいて大きな収益をもたらしてくれます。
また、もう一つの局面の見方としては、レンジなのかトレンドなのかという2つの見方です。下のグラフは、S&P500のパフォーマンスの推移ですが、赤枠で囲まれている部分は、上昇も下落もせず行き来をし、継続的な上昇・下落を経験しておりません。
一方で、青枠のトレンド局面においては、継続的な下落をしています。
このようにレンジ局面においては、下がったら買って、上がったら売ってを繰り返すことで利益を得ることができそうです。トレンド相場においては、下がり始めた(もしくは上がり始めた)初動で、売る(買う)ことが出来れば利益を積み上げることが出来ます。
トレンド戦略
先ほど説明した継続的にトレンドが発生する局面の利益を得るために簡単なトレンド戦略のバックテストを試してみたいと思います。
今回、日経225のインデックスファンドのトレンドを追う事でインデックスファンドを保有する以上に利益が出るかの検証を行っていきたいと思います。
トレンド戦略のルールは、日次データ(期間:1997/1/6~2020/6/17)を用いて過去20営業日の移動平均線(以下、短期線)と過去60営業日の移動平均線(以下、長期線)を計算します。(単純移動平均線の具体的な式は最後のエクセルファイルの式を参照して下さい。)
短期線が長期線を上回っていたら、上昇トレンドが続くと判断しポジションを100%買う。一方で短期線が長期線を下回っていれば、下落トレンドが続くと判断しポジションを100%売ります。
具体的には、下のグラフに示した通り、サインを基にポジションを取ります。
実際に上記ルールの基に戦略を実装させた結果が下記のグラフです。
見てもわかる通り、青線のトレンド戦略のパフォーマンスは、インデックスファンドを保有していた時のみと比較しても大きく負けています。赤線の超過収益(トレンド戦略のリターンからインデックスファンドのリターンを引いて指数化)も大幅に下落していることから、インデックスファンドを保有しているだけのほうが良いことが分かります。
ここからが重要な点ですが、パフォーマンスが負けているので使えないから終わりではなく何故負けているかの分析が必要です。
今回は、過去20日平均と過去60日平均を使ってサインを出しましたので、比較的短期的なサインを基にポジションを取りました。今回試していませんが、より長期的なサインを基に取った方がパフォーマンスは安定するかもしれません。
日本株のマーケットにおいては短期的なトレンドが継続して起こらないため、トレンド戦略は機能しませんでした。他の市場(例えば、米国株)で試すとまた違う示唆が得られるかもしれません。
トレンドを追う順張りの戦略は長期的に機能していなかったものの、レンジ相場を捉えるような逆張りの戦略であれば機能するかもしれません。
実際にトレンド戦略は、負け続けているものの、局面によっては勝てている期間もあり(2002年-2003年)、制約をかけてより機能しやすい局面を捉えるようなルールを作成するとパフォーマンスが改善するかもしれません。
ここでは分かりやすく説明する為、非常にシンプル化したモデルとしています。しかしながら実際には、直近のリターンに重みをつけたり、取引コストを控除したり等様々な要因を考慮した上でバックテストを行います。
ただ考え方のプロセスとしては上記で述べたようなプロセスとなりますので、個人のトレードにも参考になるかと思います。
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